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■相続一般
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1.「相続についてのお尋ね」が来た税務署から「相続についてのお尋ね」という書類が届いたのですが、どうすればいいですか?
親族が亡くなりますと死亡届を市町村役場に提出しますが、この情報は税務署にも通知されます。
すると税務署は、亡くなった人の過去の確定申告書や固定資産課税台帳、保険金の支払調書などを基に財産の所有状況を調査し、一定以上の財産があると見込まれた場合に「相続についてのお尋ね」を送付します。
ところで、この「お尋ね」ですが、たとえ相続税がかからない場合でも提出されることをお勧めします。税務署としては相続税が課税される可能性があると考えているわけですから、提出することで相続税がかからないことの証明になるからです。 -
2.相続税がかかる財産相続税がかかる財産にはどのようなものがありますか?
相続税は原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈(死因贈与を含む)によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。この場合の財産とは、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のある全てのものを言います。
なお、次に掲げる財産も相続税の課税対象となります。
① 相続や遺贈によって取得したものとみなされる財産
死亡退職金、被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金などが、これに相当します。
ただし、これらのみなし相続財産については相続人1人当たり500万円が控除されます。
② 被相続人から死亡前3年以内に贈与により取得した財産
相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人の死亡前3年以内に被相続人から財産の贈与を受けている場合には、原則としてその財産の贈与された時の価額を相続財産の価額に加算します。もし贈与時点で贈与税が課税されていた場合には、その贈与税は相続税から控除されます。
③ 相続時精算課税の適用を受ける贈与財産
被相続人から、生前、相続時精算課税の適用を受ける財産を贈与により取得した場合には、その贈与財産の価額(贈与時の価額)を相続財産の価額に加算します。もし贈与時点で贈与税が課税されていた場合には、その贈与税は相続税から控除されます。 -
3.相続税がかからない財産相続税がかからない財産にはどのようなものがありますか?
相続税がかからない財産のうち主なものは次のとおりです。
① 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
ただし、骨董的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。
② 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
③ 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人またはその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
④ 相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
⑤ 相続や遺贈によって取得したとみなされる退職手当金等のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
⑥ 個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの
なお、相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件となります。
⑦ 相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によって取得した金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの -
4.相続財産から控除できるもの相続財産から控除できるものにはどのようなものがありますか?
相続財産から控除できるものとして債務と葬式費用があります。
(1) 債務
差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。
なお、被相続人に課される税金で被相続人の死亡後相続人などが納付または徴収されることになった所得税などの税金については被相続人が死亡したときに確定していないものであっても、債務として遺産総額から差し引くことができます。
ただし、相続人などの責任に基づいて納付または徴収されることになった延滞税や加算税などは遺産総額から差し引くことはできません。
(2) 葬式費用
葬式費用は債務ではありませんが、相続税を計算するときは遺産総額から差し引くことができます。ただし葬式費用に関連しているものでも次のように葬式費用として差し引くことができるものと、できないものがありますのでご注意ください。
葬式費用となるもの・・・遺産総額から差し引くことが可能な葬式費用は次のようなものです。
① 葬式や葬送に際し、またはこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用)
② 遺体や遺骨の回送にかかった費用
③ 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用)
④ 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
⑤ 死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用
葬式費用とならないもの・・・遺産総額から差し引くことができない葬式費用は次のようなものです。
① 香典返しのためにかかった費用(香典は非課税財産です)
② 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用(生前に代金を支払っておけばOK)
③ 初七日や法事などのためにかかった費用(初七日を兼ねて葬式をすればOK) -
5.財産を相続できる人財産を相続できる人はどういう人ですか?
相続人の範囲や法定相続分は民法で次のとおり定められています。ただし民法に定める法定相続分は相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分であり、必ずしも、この相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。
(1) 相続人の範囲
死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
第1順位・・・死亡した人の子供
その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供のほうを優先します。
第2順位・・・死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母のほうを優先します。第2順位の人は第1順位の人がいないとき相続人になります。
第3順位・・・死亡した人の兄弟姉妹
その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。第3順位の人は第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。
なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。また、内縁関係の人は相続人に含まれません。
(2) 法定相続分
イ 配偶者と子供が相続人である場合・・・・・配偶者1/2 子供1/2
ロ 配偶者と直系尊属が相続人である場合・・・配偶者2/3 直系尊属1/3
ハ 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合・・・配偶者3/4 兄弟姉妹1/4
なお、子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは原則として均等に分けます。
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6.遺言書と異なる内容の遺産分割遺言書と異なる内容の遺産分割は認められますか?
特定の相続人に全部の遺産を与える旨の遺言書がある場合に相続人全員で遺言書の内容とは異なる遺産分割をしたときには、受遺者である相続人が遺贈を事実上放棄し共同相続人間で遺産分割が行われたと見做すことになります。
つまり相続人全員の合意があれば遺言書の内容に関わらず、それとは異なる遺産分割にすることができるということです。
なお、受遺者である相続人から他の相続人に対して贈与があったものとして贈与税が課されることにはなりません。
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■税務調査に選ばれやすい申告書とは
相続税の申告書を提出しますと税務署は申告内容が正しいか否かチェックし、不審な点があれば通常は翌年の8月~11月頃(ケースによっては翌々年の同時期)までに税務調査の連絡をしてきますが、何もなければ是認ということで一件落着です。
この間、人によっては落ち着かない日々を過ごすことになります。たとえ自信のある申告書だったとしても税務調査というものはイヤなものです。できれば調査がないに越したことはありません。
ところで皆様方はどういった申告書が税務調査の対象に選ばれやすいと思われますか? ここでは今までの経験を基に税務調査に選ばれやすいケースとして3つほど挙げておきます。参考にしてください。
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※税務調査に選ばれやすい3つのケース
① 税務署が把握している財産の情報と申告内容に相違があるケース
税務署は金融資産や不動産については申告する以前からかなり正確に把握しています。したがって申告書の記載内容とかなり違っている場合には調査対象に選ばれる可能性が高くなります。
➔相続税では墓地等の非課税財産以外は原則として全て申告することになっていますので、モレがないかシッカリと確認する必要があります。
② 預貯金の通帳に資金使途が不明な多額の支払いがあるケース
預貯金の通帳を見て資金使途が不明な多額の支払いがあると、何に使ったのか気になるところです。
建設会社に工事代金を支払ったとか金融機関に借入金を返済した、あるいは子供の銀行口座にお金が振り込まれているが贈与税の申告がなされていた、など資金使途が明らかであれば問題ないのですが、多額の預貯金が引き出されているにもかかわらず何の説明もないと、ついつい調べたくなるものです。
➔少なくとも過去5年程度の預貯金の動きで金額が大きいものについては調査した内容を記載した書類を申告書に添付しておくと良いでしょう。
③ 書面添付がなされていないケース
書面添付とは「税理士が申告書を作成するに当たって確認した書類」、「計算するに当たって注意した点」、「依頼人から受けた相談に対して返答した内容」などを詳細に記載した税務署指定の書式を申告書に添付することです。
こうした書面を添付することで一般的には申告書が正しく作成されているとの印象を得られるのですが、それが添付されていないということは逆の印象を与えることになるのです。
➔たとえ、お金がかかっても会計事務所に書面添付をお願いしたほうが良いでしょう。ネットで調べた限り、有料にしている事務所が多いようですが、我々の事務所では基本報酬に含まれています。
以上のような点に注意しておけば調査対象に選ばれる可能性はかなり少なくなります。
ところで相続税の申告手続きは会計事務所に依頼するケースが多いのですが、たまにご自分で申告される方もいらっしゃるようです。
報酬を支払うのがモッタイナイということでしょうが、税務調査の対象として選ばれやすいだけでなく、節税できるのにウッカリ、ということも考えられます。税務署はわざわざ間違いを指摘してくれません。
また相続が発生してから申告・納付を済ませ税務調査が終了するまでには実に様々な難しい判断をしなければなりませんし、心配事も次々とやってきます。
これらを全てご自分でやられることにどれほどのメリットがあるのか分かりません。せいぜい頑張ってください、というしかありません。